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システムエンジニアに必要なのは、経験、スキル、それとも・・

システムエンジニアに必要なのは、経験、スキル、それとも・・

1.職歴・スキルより年齢・・不問とは言え・・

私はミドル・シニア(主に60歳を超える)のエンジニアを人材不足でお困りのシステム会社様に「スキル人材」として準委任もしくは派遣にてご紹介していく事業をしているが、いざ本人のスキル・職歴にマッチした案件を提案をしても「流石にこの年齢は・・・」とか「その年齢はないわ」と断られてしまうことが多い。
年齢不問と記載あっても、60歳以上はちょっと・・という話になる。『年齢不問』とは、一般的には『60歳を超えない人』の意味の様らしい。雇用するならともかく、委任で作業依頼をするのになと首をかしげてしまう。
60歳を超えると本人の職歴表なり、人材見てもらうまでもっていくのに一苦労である。

2.依頼する側が感じるリスク

こうなるのは、仕事を依頼する側には、60歳を超える人に依頼することにリスクを感じているからだ。使う方としては、指示がしにくい、扱いずらい、適応ができない、健康への不安といったような様々なリスクがあると感じている。
もちろんこうしたことは60歳超えると突然発生するわけではないので50代と60代そんなに変わらないのにとも思うが、そこには大きな壁がある(と感じる)。60歳超えて衰えている人に依頼するのは・・ということらしい。
(30代、40代がメインで欲しいというIT業界なので、大きく譲歩して50代までは耐えてOKと言っているのかも知れないが・・)

3.60歳を超えるとなにがどう衰えていくのか(ジェロントロジ-から)・・・・

歳をとると老眼にもなるし、耳も遠くなる、記憶も悪くなってくる。では実際、加齢によって能力はどのくらい衰えていくのか。
これについてはジェロントロジー(加齢学)という学問があり、かなり前から様々な統計情報が出されている。
認知機能、知能、知恵の3つの分野で見てみよう。
(1)認知機能・・25歳から下がっていく・・但し個人差あり

認知機能とは、外部からの情報を取り入れ(入力),加工し,行動(出力)する一連のプロセス理解、判断、論理などの知的機能で、情報処理能力にあたる。システム的に言えば、CPU,ハード、デバイスの能力ということになるだろうか。
図1からわかるように、知覚的速度、推論、認知機能すべてにおいて、25歳から下がっている。PCやスマホが年数がたつにしたがって、遅くなっていくイメージだろうか。年齢的には下がっているが、点の散らばりが大きいのが特徴である。個人差があるということなのだろう

(2)知能・・・・言語能力は60歳ごろにピーク。新しいことへの適応力は、70歳すぎると明確に低下

知能とは、知的な活動能力の総称であり、「目的にあった行動をし,合理的に考え,環境からの働きかけに効果的に対処する能力」と説明される。これをシステム的に当てはめればソフトウエアのレベルということだろうか。知能は、流動性知能と結晶性知能に分けて分析されている。流動性知能とは新しい新しいことの学習や新しい環境に適応するために必要な問題解決能力であり、結晶性知能とは、蓄積した学習や経験を生かす能力と語られる。時に言語能力であったりと言われる。
図2によれば、流動性知能は、40,50歳をピークに60歳ころから下がり始める。但し明確に低下し始める(100を切る)のは、70歳、80歳なってからである。結晶的知能については、60歳ごろにピークを迎え、低下も80ぐらいまでなだらかに落ちていく感じだ。
(3)知恵・・・・ほとんど年齢による衰えなし

知恵とは「人生の実際に考慮しなければならない重大な場面における,熟達化した知識と判断力」と解説されている。
まさに知識が増えてくれば、増えてくる部分だ。システム的に言えばデータベースといったところか。グラフを見ても年齢による落ち込みはほとんどない

4.一律のバーでなく一人の技術者として「個人」で判断を

3つのグラフを見て、どう感じただろうか。思ったよりは、知能や知恵の衰えは、遅い年齢(70歳、80歳)から低下が始まっている。60代はまだまだ「現役世代」なのである。認知能力を含めて、落ちていく能力も、維持され、さらに成長していく能力もそれぞれ個人差があるということだろう。積み重ねが活きていく知恵や知能はより個人差が大きくなるのかも知れない。今までの経験、環境、考え方(ポジティブ等々)で大きく変わるのである。
記載しなかったが体力についても同じである。これこそ個人差(個体差)が大きく出てくる。全く違う職種であるが、タクシーの運転手の平均年齢は全国で56.7歳。50歳、60歳がメインの職場である。きつい仕事の担い手になっているのも見渡すと50歳、60歳なのだ。
能力についても個人差がある。だからこそ、年齢といった一律のバーではなく、各個人の職歴やスキルや性格等を判断してほしいのである。

参考文献:「知的機能の変化と適応」 東京大学ジェロントロジー研究会
:  知能の複数の下位側面(佐藤眞一(2006)2)より引用
:Baltes, Paul B.; Lindenberger, Ulman;“Emergence of a powerful connection between sensory
and cognitive functions across the adult life span: A new window to the study of cognitive
aging?”,Psychology and Aging,Volume 12, Issue 1, March 1997
:Schaie, K.W., 1980. Intraindividual change in intellectual abilities: normative considerations .
Paper presented at the annual meeting of the Gerontological Society of America
:Baltes, Paul B.; Staudinger, Ursula M.; “Wisdom: A metaheuristic (pragmatic) to orchestrate mind
and virtue toward excellence.”The American psychologist, 2000 Jan

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