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ブレインソーシング

シニアは孤独を感じやすいのか

Yahooニュースを見ていたら、この30年で「ひとりでいるほうが好き」の割合が「みんなでいるほうが好き」を逆転したらしい。
この調査は、博報堂生活総合研究所が首都圏の1200名の25~39歳の男女を対象に行っており、1993年の調査から+12.8%増加して56.3%の人が「ひとりでいるほうが好き」と答えている。

世の中はすこしずつ、ひとりが好きが増えているのか。
そう思うと、ぼっちキャンプや孤独のグルメとかソロで楽しむ番組もいくつかあり、
世の中的にはソロ化社会がどんどん進んでいるようである。

孤独は社会問題

一方で、イギリスや、日本には孤独担当相というものもでき、孤立・孤独がひとつの社会問題として捉えられている。
世の中だんだんひとりで楽しむ世界が広がる一方で、社会問題として捉えられ、(政治)制度的な対処が必要という状況で、孤独をめぐる2面性はどういうことなのか。

また中高年のひきこもりとか孤独死とか特に中高年については、孤独感が強く寂しい感じで語られることも多いので、今回は孤独とは何なのかを学んでみたい。

孤独が社会問題である背景

イギリスの調査では孤独で生じる経済的損失は、約4.8兆円にも達するらしい。
孤独感が病気を引き起こし、医療費の増大や、孤独感体調不良で生産性の低下をもたらしたりと、
孤独は社会的損失を伴うものと捉えられている。
日本でも、孤立対策推進法の趣旨には、「近時における社会の変化を踏まえ、日常生活若しくは社会生活において孤独を覚えることにより、又は社会から孤立していることにより心身に有害な影響を受けている状態にある者への支援等に関する取組」と記載があり、
心身に有害な影響=健康問題のひとつとして国として取り組んでいく必要性を唱えている。

孤独・孤独感はそもそもひとりひとりの感情にもとづくものなのだが、実際健康に害を及ぼし、その影響で生産性や、引きこもり、いじめ、自殺といった問題を引き起こし、社会的損失を生み出す。
特にコロナにより、ここ数年間人との接触をなるべく減らす期間が続いたため、より孤独感を感ずることが多くなって来た、社会的影響が出てきたということだと思える。
コロナ禍が残した災いのひとつが孤独感であり、今しきりに孤独が取り上げられる理由もそこにある。

シニアは孤独を感じやすいのか・・・内閣官房の調査から

特にシニアは死別、離別、退職等による社会からの孤立等外部との交流が少なくなり孤独を感じる状況に陥りやすい
と言われてきている。孤独=シニアの課題のひとつみたいに、孤独の代表層として言われることも多い。
では実態というのはどうなのか。ここに、内閣府の孤独・孤立対策を進める上での実態調査がある。

年齢16歳以上、住民基本台帳から無作為抽出した2万人を対象して令和4年に行われたもの。(回答数は、11218人)


年齢別孤独感を感じる割合を見ると、20歳~39歳の割合が高く、男女別では、男性では50-59歳、女性では30-39歳が最も多い。
調査統計的には、シニアに孤独感を感じやすいとうことはなさそうである。男女とも60歳を過ぎると孤独感を感じる割合がどんどん少なくなってきている。
孤立化が進みそうな年齢(例えば60代以降)になった=孤独感が増えるというわけでもなさそうだ。
孤独の科学においても、人は歳を取ればとるほど幸せに感じることのほうが多くなるらしい。
それは長年のうちにネガティブな刺激に対して鈍くなると同時に、残される時間が短いので、情緒的に満たされる人生の側面=人とのつながりに焦点を合わせられるかららしい。

孤独とは何か・・・つながりを求める欲求

統計からみても、ひとりでいること=孤独ではないようだ。それでは孤独とはいったいどういう状態なのか。
「孤独の科学」という本では、孤独感とは、特に社会的なつながりを修復するようにという単なる呼びかけ=自分への欲求だと述べている。
人間というのは、本来社会的動物であり、私達が互いに依存するのは心遣いや慰めのためではなく、生存そのもののためらしい。
孤独感とは生存本能から来る自分に対する欲求、つながりを求める欲求なのである。
その欲求に対しての強さの程度が、中堅層の孤独感の比率の高さを示してるのかも知れない。

実は孤独感は歴史的な概念

孤独は生存本能から来る自らへの欲求と述べたが、孤独というのは実は歴史的な概念でもあるらしい。
大昔には孤独という概念がなかったというわけではなく、歴史的に孤独が強調されて来ているということだと思う。
戦後、血縁、地縁、会社縁といった伝統的つながりから個人主義への転換や、20世紀後半に広まった新自由主義は、
市場競争の奨励や個人の自己責任の強調、個人主義の強化や、非正規雇用等にみられる収入格差や社会的不平等の拡大をもたらした。こうした動きは、良い面ももたらしたのだろうが、悪い面として、孤立化を増やし孤独感を感じ易くしてきたともいえる。
本来は、こうした面は社会福祉政策としてサポートすべきなのかも知れないが、新自由主義はこうした福祉サポートを縮小する傾向にもある。
もちろん現代には、ネットという便利なツールもあり、SNSで容易につながることもできる。
しかしながら、孤独感があるときに必要なつながりとは、質が重要で、数ではない。
SNSは逆に、孤独を助長し、人々が実生活でつながるのを妨げると言われてもいる。
つながりを求めるとは言え、重要なのはあくまでも、つながりの「質」ということだ。

孤独は必ずしも悪いことではない。でも孤独を感じたら・・・

孤独は、必ずしも悪いことではないしポジティブな側面も持つ。
孤独は、自分の感情や価値観と向き合い、深い自己認識を得るための機会を提供したり、日常のストレスから離れてリフレッシュし、リラックスするための機会となる。この時間を使って趣味に没頭したり、自分の欲求にあったことを邪魔されずに追及できる。

でも、もし孤独感にさいなまれるようになった場合はどうすればいいのか? 

「孤独の科学」では、孤独感は一生続くものではなく、社会的なつながりを修復するようにという単なる心の呼びかけ だとわかってしまえば対処は簡単だと述べている。
その対処とは、自分を満たそうとするのではなく、他人を満たそうとする力が必要だと続く。
他人に手を差し伸べ寛大な行為をする、他人に対して心を開き、役に立とうとするだけでよいと。

すこし「宗教的」にも感ずるが言い得て妙かなと思う。

重要なのは、孤独感とは、一生続く感情ではないこと。
逆説的なのだが、自分に対する欲求を満たすために、他人への手を差し伸べることが必要だということだ
自分の存在の中核にぽっかり穴の開いたような感じ(いわば、満たしてやらなければならない飢え)を経験しているにもかかわらず、この飢えは、食べる行為に集中しても決して満たされない。こういうときは、自分のおかれている状況がもたらす痛みの外へしばらく出て、他者を満たす必要がある らしい。

どんな小さなことでも構わないから、他者に手を差し伸べてみることが自分の存在を認識して、孤独感を和らげるのかも知れない。
ただ、孤独の科学では同時に、ついつい相手を喜ばせようとする罠に陥るので自分が現実的にこなせる関係の種類と数を承知しておくことも必要だと説く。あくまでも必要なのは、つながりの「質」なのだ。

孤独の感じ方は、個人の感受性や置かれた立場、時期(ライフステージ)等で、大きく異なる。
孤独感を感ずるのは、社会的関係をもつ人間本来の欲求であり、正常な感情なのかもしれない。
だから、感じていることに不安を感じたり、パニックに陥ることなく、自分が何を欲しているのかを見つめ、
少しづつでも、どう他者との質のいい関係性(手をすこし差し伸べることでもいい)を作っていくか
トライしてみることなのかも知れない。

■参考資料
ヤフーニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/286107653a444860840634f888547d2445bcc980
私たちはいつから「孤独」になったのか・・・フェイ・バウンド・アルバーティ/[著] — みすず書房
「孤独の科学」ジョン・T・カシオポ, ウィリアム・パトリック 他 河出文庫
内閣府 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査
日本総研:エビデンスに基づく孤独・孤立政策に向けて
週刊東洋経済 2022年11月26日号
プレジデント 2024年2月16日号

人生100年時代の「君たちはどう生きるか」

レガシィエンジニアのライフキャリアの描き方

年齢が50代後半、60代のエンジニアで、同じ会社に長く勤めされている方は、
年齢に伴う給与や雇用制度の見直し、もしくは会社からの肩たたきの動きもあり、
会社にこのまま残るべきか、辞めて、転職もしくは、個人事業主として働いていくべきか、
大いに迷うはずだ。特に今まで会社を移動する、辞めるという行為をしたことのない方
にとっては重大決断なのである。

最近、大手SIerの社員の方が面談に来られた。
年齢は60代前半、社員として30年以上働き、現状再雇用で働いている。
プロジェクトは、大手顧客で汎用機システムの開発保守を担当、
同じ顧客を長年担当しており、現状の仕事に不満を持っている様子もない、
会社から肩たたきにあう状況にも現状ないようだ。

なんでこんな方がと思い、最後に現状給与を聞いてみて
初めて辞めたいと言っている原因が理解できた。
システム開発者としてはあまりにも低い時給だったからだ。

どんなキャリア選択があるか、メリット・デメリット

確かに、同じ仕事なのに、給与が年齢で突然低くなるという状況で、今のままでいいのか、
辞めるか迷っている方もいらっしゃると思う。

そこでどう考えるべきか、どう準備すべきなのか少し考えてみたい。

レガシィ系の案件でシステム開発を担ってきた、60才前半ぐらいのSEをイメージして考えてみる。

考えられる選択枝は一般的に下記の5つぐらいであろうか。
このうち、4,5は私がアドバイスをすることでもないので1-3までで考えたいと思う。

1.会社にこのまま残る
2.会社が契約している人材会社さんから、紹介をもらう
3.個人事業主として独立する
4.システムとは別の仕事をする(NPOとか)
5.仕事をしないで、自分の趣味を追求する

まずは、1-3までのメリット、デメリットを簡単にまとめてみた。

1.現状の会社に残る
メリット
収入が安定している。現状の福利厚生もそのまま
・現状の人間関係やルールはそのまま
・使うスキルもそのまま、新たに学ぶ必要性は低い
デメリット
・給与は低いままで抑えられる
・長く残れるかは会社次第になる
・会社都合で人事異動もあり

2.会社が契約している人材会社さんに紹介をもらう
メリット
会社のブランドに基づいて紹介されるので案件の質が確保される
・給与等の待遇が現状より高い可能性もある
・新たなことにチャレンジできる可能性もある
デメリット
・新しい環境や仕事に慣れるため労力と時間がかかる
・長くできるかどうかは、転職先の会社次第
・会社が契約している人材会社であれば会社に知られる事が前提

3.個人事業主として独立
メリット
給与は高くなる可能性大
・自分の意にそぐわないプロジェクト参加は少ないし、途中で辞めることも可能
・新しい環境、文化で違ったやり方、価値観を学べる。
デメリット
・あなたのスキル・経験を知らない初見の顧客に売り込まないといけない
長く続くかはプロジェクト次第、年齢が上がるに従い案件を探すのは難しくなる
・レガシィ系の案件は多くはないため、選択枝が少なくなってくる

個人事業主の方が、給与は多くもらえるが、長く働けるかは、参加したプロジェクトの状況=「運」によるところが大きい。
当社でも65才超えて長く同じプロジェクト働いているメンバもいるが、少数であり、
おおよそ1年弱でプロジェクト終了、次の案件と渡り歩く必要が出てくる。
その時の案件数や条件がマッチすればよいが、なければインターバルが出てくる。
システムエンジニアは、業界の中で需要が高いのは事実だが、レガシィ案件は減っていく傾向にあり、
条件も少しづつ厳しくなっている。
年齢が高ければ案件を新たに見つけていくのはより難しくなることを念頭においていかないといけない。会社にいるほどには、安定的に働けるわけではないことを念頭に置く必要がある。

ではどう考えるのか、自分の好きなように選択すれば!と言いたいが・・・

会社に残るにも独立するにも、「運」にたよる部分が多いのがネックであるがではどう考えたらいいのか、考える観点としてはあなた自身の気持ちと周りのステークホルダーの状況である。

1.自分のキャリアプラン、ライフプラン
自分のライフプランとしてどう考えているのか、新たな場に出て、試したいと思っているのか
やりたいこと、こだわりたいことは何か。
仕事の質か、長さか、それとも興味か?、安定か?まず何を自分の中で重視するのか検討が必要だ。

次に考えるのは自分を取り巻くステークホルダーの存在である

2. ステークホルダーの状況
(1) 会社:自分を取り巻く状況はどうなのか?当面何の変化もなく、このまま続けられそうなのか、
肩たたきが周りで始まっていて、近い将来自分にもめぐってきそう状況なのか、会社の方針や考え方を見ていく必要がある。

(2) 家族:もし自分が転職なり、独立なりする際に、家族はどう思ってくれるのか
自由に選択できるのか、とにかく安定的に居てほしいのか、より待遇がいいところがあれば選択してほしいのか、自分の考えとともに家族と会話することが必要だ。

(3) その他:そのほか、ローンが残っていて等仕事を続ける諸事情あればこれも検討に加えることが必要だ。

(4)自分のマーケットでの価値:長く同じ会社に勤めていると、自分が現在の市場価値としてどのくらいなのか、会社を辞めて独立する際のリスクはどのくらいか、なかなかわかりにくい。
これは人材派遣会社に登録して話を聞いてみるか同じ境遇の人に聞くぐらいしかない。30代、40代みたいにどこの会社もウエルカムという状況ではない年代なので、マーケットバリュとリスクを事前確認しておくことを是非お勧めしたい。

実はバリバリSEとして働けるのはせいぜい65才ぐらいまでではないだろうか。上手くいけて70才近くか
30年近く働いてきて、残り5年、10年足らず、自分の好きなように選択すれば!と言いたいところもあるが、年齢を重ねた分、ステークホルダーも多いので、上の4,5点を吟味しながら検討していくことが 後選択したことへの納得感を持つためにも必要かと思う

人生100年時代とは、いくつになっても「君たちはどう生きるか」問われている時代ともいえるのかも知れない。

安定的に働いて、今の待遇を少しでも改善できる方法は?

今まで60代の方が転職なり、独立しようとする際にどういう風に考えるべきかという話を進めてきた。
でも多くの人はなるべく安定的に働けて、より待遇がよくなる方法がないかと思っているはず。
個人的に考えるそれに見合う方法は、

プロジェクトで一緒に働いた協力会社さんに転職できないか検討してみることだ。

一緒に働いている協力会社さんであれば、会社状況も雰囲気もわかるだろうし、
相手もこちらのスキル、人格をわかっているので、判断しやすいし、
より高い待遇で迎えられる可能性も高いだろう。
もちろん、本人が協力会社から来てほしいまで行かなくても、
来てもいいよと言われるぐらいの人物であることは前提ではあるが・・・
やはりリスクを下げるには、人脈を生かしたほうが良いと思う。

自分のマーケットバリューを知りたい方は

長く働いてきた会社を辞めるのかの判断をするには、やはり事前準備が必要だ。
最初就職するために準備をし何社も面談を受け、今の会社に入ったはずだ。
同じように新たに転職、独立を選択する際にも準備が欠かせない。
その中で、自分のマーケットバリューやレガシィ案件の状況等知りたい場合には、
是非弊社にお問合せ頂きたい。
当社は、ベテラン向けの案件を多く取り揃えており、特にレガシィ案件が多い。
今すぐ転職するわけでなくても、あなたの職歴表から、どんな選択が可能なのか
客観的にお話ができると考えている。是非ブレインソーシングに登録頂き、あなたの
職歴表をもとによりよい選択枝を探せればと思っている。

参考:一部BingAI(https://www.bing.com/ai)での回答をもとに記載をしています。

能力は年齢と共に衰えるのか

年齢条件は依然厳しい

コロナも5類となり、日常生活が少しづつ戻ってきている。
少子高齢化がどんどん進んでいく中で、長期的にはシニアの就労への役割は高くなって
いいはずであるが、案件の年齢状況を見ると、なかなかそうなっていないようだ。

そこには、年齢が高い人に対するステレオタイプ的な見方(バイアス)があるようにも思う。
ネガティブバイアスであれば、生産性が低い、新しい環境への適応力が弱い、といった能力
に対しての面や、年上に指示は出しにくいといった心理的なバイアスもあるであろう。

やはり年齢が高いと能力が低いのか?

能力の面で、年を取ると生産性が低いのかについて今回調べてみた。
年齢と能力(intelligence,ability)の研究は長い間行われてきており、
最もポピュラーな分析は知能を流動性知能と、結晶性知能に分けて分析するやり方である。
多くの知能検査もこうした理論やその派生理論に基づいて行われてきているようである。

流動性知能と結晶性知能

           (図1 流動性知能と結晶性知能、年齢による変化)
流動性知能とは、生まれつきの能力とも言われ、短期記憶に能力に依存し、脳の伝達速度に
由来する能力で、情報の処理スピード、直観力、法則を発見する能力、図形処理能力、
記憶力等が当てはまる。いわば、ハードウエアとしての脳の能力を示す。
こうした能力の一部、例えば数的処理能力は20歳前後にピークを迎えるらしい。
子供が暗算のスピードや、知識の量や蓄えるスピードをテレビなので見るといつも関心させられる。
但し、流動性知能の中でも知覚速度や空間認知といったの能力は、60才ぐらいまでは維持され
ゆっくり下がってくるとわかっている。

結晶性知能は、後天的で、長期記憶の能力に依存し、知識の獲得と技能・経験の習熟によって
成長しつづける能力で、言語能力、理解力、洞察力のような能力が当てはまるようである。
大手企業の会社の経営者も50代、60代が多いし、こうした方々が話しているのを見ると重みや、
深さを感じるのはそういうことであろう。


(図2 6つの能力の年齢による影響)

加齢でも向く仕事とは:自己の経験を活かす、言語を媒体とする仕事

グラフを見ると、得意な仕事の分類、苦手な仕事の分類が見えてくる。
やはり、長い年月をかけて獲得された経験に関連した仕事遂行は得意だろうし、
言語理解能力も深まることから、言語化する仕事、言葉によって伝える仕事、
例えば、プロジェクト監査やプロジェクト支援、プロジェクト調整が向いているのかも知れない。
設計等も、過去の経験、知識が活かせ、経験的評価が活きる場面では向いているのだろう。

逆に向かない仕事:スピードを要求される仕事

処理スピードについては、遅くなるので、速度を求められる仕事や、新しい分野の習得については
若い人とは同じ速度ではできないのかも知れない。
PCやスマホを打つスピードも、やはり若い人にはかなわないだろう。
ただ速度は遅いけれども、熟考しながら進めて行くことで、ミスや手戻りを減らしカバーできる仕事であればOKだ。
新しい分野の習得(例えば新しい言語の習得)についても、難しいというわけではなく、
若いころより時間がかかるというレベルだろう。
iPhoneのゲームアプリ「hinadan(ひな壇)」を作った有名な若宮さんは、81才からプログラミングを学び始めたようであり、スピードを求められなければ、60代でも、30代、40代と変わらないか、経験や知見をもとにした仕事であれば、それ以上の能力を発揮できる可能性があるということが確認されているのだ。

個人差はあるので

こうした能力には個人差があり、かつ年齢が高くなるにつれ、ギャップも大きくなるようだ。
結晶性知能も、後天的な能力であるので、使われなければ、落ちてくる。流動性知能についても同様で個人差もあえば、訓練によって維持していくことも可能なようだ。図3は知能試験での年齢別の分布を示したものである。一般的知識に関しては平均はゆっくりと下がっているが、分布幅を見るとほぼ平行であり年齢差は顕著ではない。一方情報処理速度については、分布幅も顕著に右下がりではあるが、個人差があり、60才でも速い人であれば、40才の平均ぐらいの処理速度を備えている。

いくつになっても自分の能力を磨き続けることが大事

今回は年齢における能力差についてみてみた。スピードや量といったハードウエア的能力については、次第に落ちてくるも、仕事を遂行していくための能力については、年齢による影響は60代までは、影響はない、さらに延びていく能力もあることを見て来た。またそうした能力を維持、強化していくためには、能力を使っていくことが大事であることを述べた。

心理学者のシャイエ(図2の研究を行った学者)は、こうした能力を維持するためには下記の心得や環境が必要だと述べている。
・複雑で知的刺激が多い環境にあること
・柔軟な生き方をすること
・脳の情報処理の早さを維持すること

こうした環境、生き方を進めていくためには、’どう老年期を生きたいかの選択’によるところも大きいようにも思う。働くことの意味付けも若いころと異なるであろう。次回は、老齢期における仕事をすることの意味についても考えてみたい。

参考文献
:「知的機能の変化と適応」 東京大学ジェロントロジー研究会
:知能の複数の下位側面(佐藤眞一(2006)2)より引用
:知能のエイジングに関する研究の動向 日本老年社会科学会 西田 裕紀子
:高齢者心理学、北大路書房
:最新老年心理学 : 老年精神医学に求められる心理学とは ワールドプランニング
:発達心理学Ⅱ 東京大学出版会
:新・発達心理学ハンドブック = HANDBOOK OF DEVELOPMENTAL PSYCHOLOGY 福村出版
:Handbook of the psychology of aging Ninth edition (The handbooks of aging)

 

 

リスキリング・アンラーン:過去の経験は?

リスキリングとアンラーン

最近、リスキリングだったり、アンラーニングという言葉が今もてはやされている。
新しいスキル、知らない領域の知識などを学ぶ「リスキリング」、
学ぶにあたり今までの知識や、考え方を捨てることを「アンラーン」と
言うらしいが、この2つの言葉、表裏一体のような気がする。
どちらも、「学びなおし」という意味合いで使われ、学ぶことに重点をおいているのか過去を棄却することに重点を置いているのかの違いのようにも思える。

今なぜこうした言葉が頻繁に出てくると言えば、コロナによる生活様式の変化で、
新しい様式・ツールに多くの人が否応なく対応せざるを得ない状況となり、かつ、
国の成長戦略のひとつとして位置づけられているからだ。

長く様々なプロジェクトを渡り歩いている人はすでにアンラーンして来ている

私の仕事柄、多くのベテランエンジニアも方と面談を過去してきたが、
自分の知識・経験の枠内でしか話されない方や、過去の失敗を活かしきれない方がいらっしゃる中で、
様々なプロジェクトを長期に続けられている方というのは、すでにアンラーンしながら、現場に上手く適応されているのではないかと思う。
新しい顧客・新しいプロジェクトになれば、開発言語が同じであっても、開発ツールも変われば、ルールも環境も人も異なる。例えば新しい構成管理ツールを目の前にして、手を出さず「昔のツールの方がはるかに使いやすかった」と愚痴っているだけならプロジェクトに貢献することはできないだろう。
長くプロジェクトを続けられる人は新しいツールでも抵抗なく自分の仕事のプロセスに組み込んで
プロジェクトに溶け込んでしまう。

過去の経験・視点だけで見ると新しいものは正確に見えないことも

また以前、面談していて、ベテランCOBOLエンジニアの方から、「所詮COBOLもJavaも同じでしょ。本見ればJava書けるよ」と言われたことが数回ある。本人は、自ら止の可能性を宣伝したかったのだろうが、知っている人からすると「根本的な違い」を理解しているのか?「中身知らないで行っているな」と感じてしまう。
今まで経験してきた手続き型言語の視点で他の言語を見ると、所詮ロジックは条件節とループがメインだし、違いは無いと本人は感じてしまうようだ。
どうしても、自分の経験してきた尺度で物事を見・判断してしまうと、「どうせこんなもんだろう」と固定化して、ただの「知ったかぶり」で思考が止まってしまう。

ベテランの強みは経験だけど

でもベテランの優位点はやはり経験の多さ・長さだろう。いろいろな種類・場面の経験、成功も失敗も
含めてもっていることが強みである。これを全部捨てたら(アンラーンしたら)何も無くなってしまうのではないか。
一方でシニアは頭が固いとも言われる。「固い」とはどういうことかと言うと、行動や考え方を固定化してしまうことだ。なぜ固定化してしまうのかというと、頭にとってそのほうが情報処理上「楽」だからではないかと思う。新たな情報もいままでどおり処理すればいい。だから簡単だ。アンラーンしないといけないのは、この「固定化」なのではないか。

経験を活かしながら上手くアンラーンするには

豊富な経験は、ベテランエンジニアにとって大きな差別化要素だけれども、あくまでも差別化の
一つでしかない。経験に囚われるすぎると、自分が逆に囚われてしまう。
アンラーンとは経験を全て捨てるということではなく、ある意味過去経験をどう位置付けるのかと
いうこととも言い換えられないか。

以前運用保守の仕事をある方にご紹介したときに、「過去に構成管理の失敗経験があるので、構成管理は他の方にお願いできませんか」と頼まれたことがある。失敗経験を「君子危うきに近寄らず」で失敗=地雷として自分の仕事範囲を絞る例だ。失敗は誰にでもあるし、今時失敗を経験していることが貴重な経験のひとつとなる。こうした経験をより良く仕事をしていくために活かさないと、経験の意味・価値がないとも思う。失敗したという経験ではなく、何が失敗を生んだのかという経験の見直し・分解が必要な場合もあるだろう。

過去の経験は、新しいことを学ぶ上でのひとつの視点にも

また新しいことを学ぶ上で、過去の経験は、比較しながら習得できる視点にもなりうるかも知れない。
JavaはCOBOLと何が違うんだ、なぜJavaは広がり、COBOLは少なくなったのかという視点を持ちながら学ぶと、より全体像を把握しやすいかも知れないし、逆に比較してみて、まったく比較対象にならないのであれば、それこそ過去の知識を敢えて棄却してまっさらな気持ちで学べば良い。

アンラーン:過去の経験・知識に囚われない

アンラーンの要諦は、過去の経験に囚われるなという事ではないか。
新しい環境に対応して長く活躍していくためには、アンラーンが必要な場面が今後も多く出てくると思う。その時に、いままで自分が経験してきたこと、蓄積してきた事をどう位置付けて(視点のひとつとするのか、抽出して一部を活かすのか、それとも棄却するのか)、新しいことに臨むのかが今後の変化に対応していくために重要な姿勢ということではないだろうか。

アフターコロナの案件状況は(PART-Ⅱ)


前回2021年度の案件状況を2020年度と比較し、件数として回復傾向にあること、その中でJava案件の
延びが大きいことが解りました。(前回ブログ)今回は、2021年度のCOBOL案件や、インフラ・基盤、PMO案件の傾向をまとめてみたいと思います。なお、毎度のことですが、あくまでも弊社に来る案件を基にまとめたものであり、規模的には小さいので、一つの例、状態としてこんなことが起きていると見て頂ければ幸いです。

1.COBOL案件状況:年齢条件としてはあまり変わってきていないが・・


COBOL案件の年齢条件の変化を分類してみました。2019年から2022年1月~3月期を比較してみると、
年齢割合は大きくは変化していないように見えます。年齢条件記載無し案件の比率は増えてはいますが、30代40代+年齢記載なしと50代~65才までの案件数割合は、少しづつ50代以降の比率が少なくなってきており、コロナを乗り越えた後に、年齢制限が大きく緩和される状況になるということは現状なさそうです。
やはりこうした制限を超えていくには、スキル、経験が特殊(アセンブラ、特殊言語)であったり、
深さ(例えばOS系やツール系のスキル、業務・上流系)、過去従事プロジェクトの長さ等が重視されてくると思われます。

2.インフラ・基盤案件の傾向・・・AWSが6割


弊社に来る件数の2割を占めるのが基盤系の案件。件数も年々延びているので、その中でクラウド指定がどれほどあるのか調べてみると、AWSが55%、Azureが25%、GCPの割合となってきています。
OSで見るとLinuxが7割、Windowsが3割という比率となっています。


クラウド別OSで見ると、AWSではLinuxが8割の比率となっているのに対して、逆にAzureでは7割がWindowsとなり提供元の特徴が顕著に出ている結果となりました。
やはりクラウドを選択する際においてもOffice365等MS製品の親和性を優先しているのかも知れません。今後インフラ基盤技術でアピール目指す方は、LinuxメインであればAWSのサービス、WindowsであればAzureのサービススキルを身に着けると、よりスキルアピール度が高くなると言えるかも知れません。

3.PMOに求められる役割とは・・業務スキル、基盤スキルのプラスαが必要な案件が9割近い


PMO案件についても1割強を占めるので、どのような役割が求められるか分類してみました。年齢を重ね、開発現場から管理をメインでされていた方は、PMOでの案件要望となりますが、PMOに求められる役割も非常に幅が広い。PMのお手伝いで議事録書き等から、基盤や開発の支援、その上流をつかさどるもの、コンサル的に立ち回るものまで、求められるスキルもかなり多様です。
そこで、PMOとしてどんなスキルが求められているかを調べてみましたた。
2021年の案件を見ると工程管理、進捗管理、品質管理、ファシリテーション等の分野は、1割強。顧客の業務や、プロセスフロー等業務系が求められているPMO案件が社員代替も含めて5割を占めています。その他、開発技術(例:ソースレビューや、フレームワーク技術)や基盤技術(例:クラウド技術)等自らは”手を動かさない”けれども技術的支援を担う案件も3割強あり、PMOとしてのみ専門で来た方より、今まで設計や開発、基盤構築等を経験した方がPMOとしてプロジェクトを引っ張って行く、そんなPMOが今求められていると言えます。

以上2021年度の案件を分析して来ました。コロナで一時期大きく案件件数の変動はありましたが、コロナを経て大きなトレンドに変更はないまま、件数的にはコロナ前に戻って来た状況にあるようです。また定期的に件数変動等分析していきたいと思います。


#シニア #仕事 #エンジニア #システム #COBOL #コロナ #クラウド #基盤 #インフラ #PMO #AWS #Azure #Linux #Windows

アフターコロナのシステム案件状況は・・2021年度と2020年度を比較してみた

要約
・案件は回復基調である。
・案件種別での構成比は大きな変化は認められない
・月別にみるとJavaの案件の延びは大きくなっている

コロナによる制限が解除され、少しづつ街中に人が戻り、通勤電車もすこしづつ混み始めている。
前々回(2020年5月)のブログにて、2020年の案件状況について
「3月,4月,5月と案件件数が落ちてきて5月は1月の6割ベースの件数となり厳しい状況である」と記載した。それから1年経過し、コロナが収束しつつある今の案件状況はどうなっているのか、見てみたい。

いつもどおり、これから述べる案件状況は、あくまでも弊社に来る案件を基にまとめたものであり、
規模的には小さいので、一つの例、状態としてこんなことが起きていると見て頂ければ幸いである。

1.全体案件の状況・・・件数は回復基調。今後も延びていくのでは

月別案件数の推移を見てみる。2020年4月の案件数=1として、2020年度と2021年度を比較すると
2021年度は全体で3割ほど増えてきている。
さらに年度後半に向かって延びが拡大していく傾向である。
案件数は、厳しい状況を少しづつ脱してきて、拡大基調にあるように見える。

2.案件の構成比変化・・・大きな変化は見られない。

案件数は拡大基調として、案件種別の変化はあるのだろうか。構成比を比較してみた。
年度ごとに比較すると、大きな変化は見られないようだ。
Javaが3割、インフラ・基盤が2割弱、PMO等が1割、js,C#,Python,スマホ開発と続いている。
それぞれ少しづつ年度間での変動はあるが1~2%の範囲にとどまっている。
DX,AI等新たなテーマが出てきているが、案件の構成比を大幅に変更を与えるほどの
インパクトはまだ出ていないようだ。
(もしかしたらこの傾向は、お取引させて頂いている会社様の担当分野に依るところが大きいのかも。)

3.種別ごとの案件数月別変化は?・・・・やはりJavaは延びが大きい。

構成比を年平均すると変化はないが、月別での延びはどうなのだろうか。
案件の延びと規模を表現するために2021年4月のJava件数=1として、
各種別の月別案件変化率を見てみた。
各種2022年3月に向けて延ばしているが、やはりJavaが大きく延ばしているように見える。
構成比が一番高いJavaの案件がいち早く復活基調にあるのかも知れない。

今回は、コロナの収束を迎えて今、システム案件の状況がどのようになっているのかを分析してみた。
次回は、COBOL案件の状況や、インフラ、PMO等の2021年度傾向を調べてみたい。