• 03-6869ー4694
  • info@market-interface.co.jp

タグアーカイブ 知能

能力は年齢と共に衰えるのか

年齢条件は依然厳しい

コロナも5類となり、日常生活が少しづつ戻ってきている。
少子高齢化がどんどん進んでいく中で、長期的にはシニアの就労への役割は高くなって
いいはずであるが、案件の年齢状況を見ると、なかなかそうなっていないようだ。

そこには、年齢が高い人に対するステレオタイプ的な見方(バイアス)があるようにも思う。
ネガティブバイアスであれば、生産性が低い、新しい環境への適応力が弱い、といった能力
に対しての面や、年上に指示は出しにくいといった心理的なバイアスもあるであろう。

やはり年齢が高いと能力が低いのか?

能力の面で、年を取ると生産性が低いのかについて今回調べてみた。
年齢と能力(intelligence,ability)の研究は長い間行われてきており、
最もポピュラーな分析は知能を流動性知能と、結晶性知能に分けて分析するやり方である。
多くの知能検査もこうした理論やその派生理論に基づいて行われてきているようである。

流動性知能と結晶性知能

           (図1 流動性知能と結晶性知能、年齢による変化)
流動性知能とは、生まれつきの能力とも言われ、短期記憶に能力に依存し、脳の伝達速度に
由来する能力で、情報の処理スピード、直観力、法則を発見する能力、図形処理能力、
記憶力等が当てはまる。いわば、ハードウエアとしての脳の能力を示す。
こうした能力の一部、例えば数的処理能力は20歳前後にピークを迎えるらしい。
子供が暗算のスピードや、知識の量や蓄えるスピードをテレビなので見るといつも関心させられる。
但し、流動性知能の中でも知覚速度や空間認知といったの能力は、60才ぐらいまでは維持され
ゆっくり下がってくるとわかっている。

結晶性知能は、後天的で、長期記憶の能力に依存し、知識の獲得と技能・経験の習熟によって
成長しつづける能力で、言語能力、理解力、洞察力のような能力が当てはまるようである。
大手企業の会社の経営者も50代、60代が多いし、こうした方々が話しているのを見ると重みや、
深さを感じるのはそういうことであろう。


(図2 6つの能力の年齢による影響)

加齢でも向く仕事とは:自己の経験を活かす、言語を媒体とする仕事

グラフを見ると、得意な仕事の分類、苦手な仕事の分類が見えてくる。
やはり、長い年月をかけて獲得された経験に関連した仕事遂行は得意だろうし、
言語理解能力も深まることから、言語化する仕事、言葉によって伝える仕事、
例えば、プロジェクト監査やプロジェクト支援、プロジェクト調整が向いているのかも知れない。
設計等も、過去の経験、知識が活かせ、経験的評価が活きる場面では向いているのだろう。

逆に向かない仕事:スピードを要求される仕事

処理スピードについては、遅くなるので、速度を求められる仕事や、新しい分野の習得については
若い人とは同じ速度ではできないのかも知れない。
PCやスマホを打つスピードも、やはり若い人にはかなわないだろう。
ただ速度は遅いけれども、熟考しながら進めて行くことで、ミスや手戻りを減らしカバーできる仕事であればOKだ。
新しい分野の習得(例えば新しい言語の習得)についても、難しいというわけではなく、
若いころより時間がかかるというレベルだろう。
iPhoneのゲームアプリ「hinadan(ひな壇)」を作った有名な若宮さんは、81才からプログラミングを学び始めたようであり、スピードを求められなければ、60代でも、30代、40代と変わらないか、経験や知見をもとにした仕事であれば、それ以上の能力を発揮できる可能性があるということが確認されているのだ。

個人差はあるので

こうした能力には個人差があり、かつ年齢が高くなるにつれ、ギャップも大きくなるようだ。
結晶性知能も、後天的な能力であるので、使われなければ、落ちてくる。流動性知能についても同様で個人差もあえば、訓練によって維持していくことも可能なようだ。図3は知能試験での年齢別の分布を示したものである。一般的知識に関しては平均はゆっくりと下がっているが、分布幅を見るとほぼ平行であり年齢差は顕著ではない。一方情報処理速度については、分布幅も顕著に右下がりではあるが、個人差があり、60才でも速い人であれば、40才の平均ぐらいの処理速度を備えている。

いくつになっても自分の能力を磨き続けることが大事

今回は年齢における能力差についてみてみた。スピードや量といったハードウエア的能力については、次第に落ちてくるも、仕事を遂行していくための能力については、年齢による影響は60代までは、影響はない、さらに延びていく能力もあることを見て来た。またそうした能力を維持、強化していくためには、能力を使っていくことが大事であることを述べた。

心理学者のシャイエ(図2の研究を行った学者)は、こうした能力を維持するためには下記の心得や環境が必要だと述べている。
・複雑で知的刺激が多い環境にあること
・柔軟な生き方をすること
・脳の情報処理の早さを維持すること

こうした環境、生き方を進めていくためには、’どう老年期を生きたいかの選択’によるところも大きいようにも思う。働くことの意味付けも若いころと異なるであろう。次回は、老齢期における仕事をすることの意味についても考えてみたい。

参考文献
:「知的機能の変化と適応」 東京大学ジェロントロジー研究会
:知能の複数の下位側面(佐藤眞一(2006)2)より引用
:知能のエイジングに関する研究の動向 日本老年社会科学会 西田 裕紀子
:高齢者心理学、北大路書房
:最新老年心理学 : 老年精神医学に求められる心理学とは ワールドプランニング
:発達心理学Ⅱ 東京大学出版会
:新・発達心理学ハンドブック = HANDBOOK OF DEVELOPMENTAL PSYCHOLOGY 福村出版
:Handbook of the psychology of aging Ninth edition (The handbooks of aging)

 

 

1